甘えたいのに――……



「お待たせー、律!」



その声に静奈はビクッとする。
見ると、手を降ってこちらに駆け寄ってくる友香の姿があった。


なんで友香さんが…。


そう口にしそうになって慌てて口をギュッと閉じる。



「あれ?あなた秘書課の?」



笑顔で顔を向けられ、とっさに頭を下げた。

高柳の手が離れる。



「友香、お前本当に…」
「え?何?」



呆れたような口調に可愛らしく首をかしげる。


そんなやり取りも自然で更に泣きたくなった。



「何かお取り込み中だったかしら?」

「…別に…」



高柳が言葉を濁す。
あぁ、そうか、と思った
2人は待ち合わせしてたのか。

そういえば、昼に高柳の携帯に友香から連絡があった。


約束をしていたのだろう


「私…帰ります。」

「大丈夫か?」



そう聞く高柳ににっこり笑った。



「ハイ。大丈夫です。」


そう言ってクルッと踵を返す。


走り去ってはいけない。
自然に立ち去らなければ 。



しばらく歩いて、そっと振り返った。


さっきの場所に2人はもういなかった。



「…」



寄りを戻すのだろうか。 3年ぶりの再会だ。あり得る話。
あの2人なら絵になる。


「…大丈夫」




まだ、傷は浅くてすむから。