威鶴の瞳



「トーマ、絶対に、家帰れよ?」

「大丈夫だ、『依鶴』さん連れてって叶香と遥香に紹介してやる」

「言っちまえば二人には会ってんだけどな。でも家、楽しみにしてる」

「お前1つに戻っても『中』から見れるのか?」

「知らないけど、じゃ『依鶴』の代わりにって事で」



トーマとも笑い合う。



あぁ……いいな、この感じ。

今までと同じ雰囲気の、バカみたいにどうでもいい会話。



こんな会話をしながら、依頼をしていたな。

依頼を楽しく済ませられていたのは、トーマのおかげかもしれない。



トーマの影響力は依鶴にも、俺にも、大きかった。



「アンタたち、こんな別れ際にまでどうでも会話するなんて……呆れるわ」

「これが俺たちなんだよ」

「そうだ。普段通りが一番」



レインには、何度呆れられたことだろう?

でもそれ以上に俺たちへの評価は高かった。



能力の事は出来るだけ秘密にしていてくれていた。

俺が三つの人格を持っている事を知っても、受け入れてくれたし、本来なら禁止だった事にも、目をつむってくれていた。