とは言っても、場所を変更するにも場所がない。
「千鶴、移動したいんだが……静かに話せる場所はないか?」
「静かに?家はどう?」
「……それは実家、か?」
誰も居なければ、それでもいいかもしれない……。
「あ、そっちじゃなくて、私たちのマンション。子供を迎えに行くまでは静かよ」
「助かる」
俺たちは千鶴の家に場所を移動した。
喫茶店から五分弱、千鶴が今暮らしているマンションに着いた。
実家にも喫茶店にも近い。
「ここを離れたら、もう依鶴とは会えなくなると思って、でも、あの家にも戻りたくはなくて……結果的にこうなっちゃったかな」
そう言って千鶴は苦笑いをしていた。
「千鶴も、あの家が好きじゃなかったのか?」
「娘を怖がる親なんて親じゃないわ!」
そう言って千鶴は笑った。



