帰りたい。

確かにそう思ったのに、着いてみると帰れはしなかった。



帰ろうとはした。

でも、なぜか大きな不安が押し寄せてきて、帰りにくいというか、誰かいるのかと思ったら……帰ることが怖くなった。



どうして私は、この街を選んでしまったんだろう?

この街に愛着があったわけではない。

確かに、知っている場所に行きたかったという理由があるけれど、でもこの街に私は好かれていない。



家から遠ざかるように、過去をたどった。



駅の近く、16歳の頃ここで占いを始めた。

人を集めて、スカウトされて、お店でさせてもらって。

私が踏み出した一歩。



少し歩けば小学校と中学校。

いい思い出は、ないけれど。


幼稚園にも行ってみた。

姉に連れて行ってもらったことのある公園、少しだけ通った高校。



閉まっていたお店が少しずつ開店してきた頃、近くのカフェに入った。