トーマはまだ、気付いていない。

俺が過去を見てしまったこと、それにより……助けたいと思ってしまったこと。



「そう、かな」



ふっと笑うトーマ。

強くなった、心が。

前より力がついたその腕で、人を助けられるようになった、余裕を感じられるようになったはずだ。



「威鶴」

「なんだ?」

「ありがと、な」



……違うんだよ、トーマ。

俺は本当はそんな、礼を言われるような事をしたつもりはないし、信頼されるべき人間でもない。

お前に……誰にも話せない、秘密もある。



ひどく歪で、不安定な人間だ。



それを知った時、お前は一体何を思う?

きっと絶望して、離れていくことだろう。



トーマに答えず、道を進む。



真っ直ぐ進むトーマに、左へ曲がる俺。

まるで未来を歩いているかのように錯覚する。