威鶴の瞳


まぁパートナーを疑うようなことはしたくないから、前者だと思っておこう。



「で、なんで俺はここに居るか聞いたんだが」

「どこまで覚えてる?依鶴さん迎え行った時起きてたか?」



迎えに来られた……?



「どこに?」

「あの時威鶴は寝てたのか。お前実家の方まで行ってたから俺が迎えに行ったんだ」



あの日俺が飛び出してから一度も帰っていないあの家を思い出す。



「誰があんな家帰るんだよ?その上遠い」

「お前……というか、本当の『依鶴』さん。今住んでるとこがわからなかったんだ」



そう言われてみれば、納得する。



さっきの俺みたいに、自分が知らない場所に居れば混乱はするだろう。

トーマが迎えに行ったということは、その時誰も知り合いがいなかったんだろうし。

最近は起きてくる回数が増えたし、時間も長くなってきた。

もういつ吸収されてもおかしくない。

少し寂しいとは思うけれど、仕方ないことだろう。