まるで母親の気分。
自分の知らないところで起きていることが少し怖い。
「じゃ、戻ったとこだし、俺は帰る」
「あ……ありがとう。お弁当……」
「おー。……っつってもお前食ってないだろ?」
「……うん、残念」
ポツリ、呟いた言葉。
お弁当は、『依鶴』が味わって食べた、らしい。
私はいつの間にかお腹いっぱい……損した気分。
「……夜、飯作りに行く」
「……え?」
それは、あの全てを打ち明けた日以来の訪問。
「帰り、また迎えに来る」
そう言って、トーマは帰って行った。
少し、得した気分……。
単純だなぁ、私。
こんなに単純だなんて、知らなかった。
トーマと関わると、私の知らなかった私が発見されていく。



