「トーマさん、あなたは眠りについている本物の『依鶴』を引き出す『鍵』です。依頼の帰りにいきなり変わった人格も、本物の方でしょう」
怖い。
けれどこれは、『依鶴』の為。
可能性があるなら、私と威鶴はもとに戻らなければいけない。
「……続きを話しますと、姉の衝撃で誕生した男の人格『威鶴』は家をとび出し、レインに拾われました」
トーマがふと、何かに気付いたように私を見る。
「同じ……か?」
「そう、トーマさんと、同じ状況。だから威鶴は、トーマさんを拾った、とも言えます」
あぁ、話さなければいけない事が、山ほどある。
「拾われたのは18の頃、そして20でトーマさんを拾い、関わっているうちに……きっと信頼みたいなものが生まれて、それに反応したのか、本物が目を覚まし始めた」
過去の話はこれでおしまい。
あとは……。
「ごめんなさい」
「……いきなりなんだよ?」
私はトーマにちゃんと向き合い、今までずっと黙っていたことを、打ち明けた。