その姉が。



「その姉が……」



視界からも伝わってきた、大きな衝撃。

視界いっぱいに広がる空、人、地面、車――赤。



「事故で……」



狭くなる視界を埋め尽くす、赤。

赤い道路、赤い手、赤い車、赤い――。



「『依鶴』の記憶だけを、全てなくして、帰って来た時に」



帰って来た時に。

『……え、誰?』



『依鶴』を唯一『居るモノ』として接してくれていた、姉。



真っ直ぐと――『依鶴』の瞳を、見つめて。

初めて、目が合って、過去を見て、事故に合っていて。



私の唯一の大切な人が、私の全てを創ってきた存在が。



記憶、ヲ、失クス、ホド、ノ、衝撃――赤。

真ッ赤、世界ガ、





   血 ノ 色 ニ 染 マ ル





「『依鶴』は、現実から、逃げました」