私の名前は誰も覚えていなかったし、噂で呼ばれる名前は『魔女』。

きっと、依鶴という名前を使えば分ってしまうから、そう呼び変えていたんだと思う。



でも、私は気付いてしまっていた。

『魔女』と呼ばれる理由は、すでになくなっていた。



「それでも、姉だけは違ったんですよ。両親は帰ってすら来ないのに、姉はちゃんと姉としての義務を果たしてくれていました」



ちづる。

ちづる、チヅル、千鶴――。



彼女は、私を忘れてしまった今、幸せだろうか……?



「瞳は最後まで合わせてはくれませんでしたが、ご飯を作ってくれたり、風邪の時は薬を持ってきてくれたり、『普通』には及ばないながらにも、優しさをくれました」



我慢していたものが、耐えきれずに、ポロリ、ポロリ。

頬を伝う……。



「両親が私を捨てて、姉も独り暮らしで出て行って、私は一人になった。それでもなんとか『占い師』として、ゼロからスタート出来ました。全て姉のおかげです」