トーマは、ちゃんと理解出来ているだろうか?

付いてきているだろうか?



「簡単に言ってしまえば、『多重人格』です」



トーマの瞳が、驚きでいっぱいになる。



「依鶴の過去の話をしたでしょう?本当は占いなんかじゃないです。あれはただ言い変えただけ。子供の頃から『魔女』と呼ばれてきたのは、この能力のせい」

「能力っつーと、つまり、威鶴の……」

「そうです。威鶴の瞳、聴覚、触覚、スピード、正確さ。イコール全て、私も持っている能力ですし、『依鶴』ももちろん」

「……」

「特に瞳は最も恐れられました」



誰もが逃げてく。

瞳を反らす、目が合わない、まるで化け物から逃げているような、恐怖の眼。



「知っていますか?人って、簡単に壊れるんです。『何も見ていない』『関わらない』、それだけで自分の存在理由はないも同然なんですよ」

「そんなこと……」

「私は『いない』存在だった。家でも、学校でも、外出先でも。幽霊と同じですよ。そこに実体があるだけで、誰にも見えていないような、幽霊」



私は、幽霊だった。