「大丈夫、です……。すみません、心配かけてしまって」
そう言って、私は立ち上がる。
すで占いの時間は終わっている。
これからBOMBで依頼を申請しなければいけない。
ケータイを確認すると、レインからの連絡はなかったから、今日は依頼なしか……よかった。
「少し待っていてください」
そう言って私は、帰り支度を始める。
支度……とは言っても、時間がかかるものではないけれど。
この時、私は気付いていなかった。
トーマの瞳を見ることを、少しだけ、躊躇っていたから。
取り乱した心を、知られたくなかったから。
トーマに刻まれた、数分前の記憶。
『助けてください、私──』