――あの子が姿を現した。





「『私は柴崎依鶴です』っつってたから、ピンと来てな」





サァっと血の気が引くような感覚。

それでも体はアツイかサムイかわからない。



「……すみません、ちょっと、忘れていたみたいで」

「いやいい。それだけ話してすぐにまた寝ちまったからとりあえずベッドに運んだり医者呼んだりして――あ、心配しなくてもどこも見てねーし触ったりとかもしてねーから。運んだ以外は」



いづる、確かに『依鶴』だ。

あの子も私も、おんなじ『依鶴』。



「あの、いろいろと、ありがとうございました……」

「あぁ、別に。そうだ、威鶴は?男の方……ってあれ、アイツの本名俺知らねんだけどわかるか?」

「あー……あぁ、はい、彼は、ですね……」



さて、どうしようか。

ここから先は考えていない。



「彼はそのー……実家じゃないでしょうか!」



――もう少しマシな理由は思いつかなかったのか、私……。