この時、俺の思考は完全にどうかしていたんだろう。
ケータイを取り出し、メール画面を開き、そのまま一文を打ち、トーマにメールを送ってしまった。
『助けろ』
そこで意識はプツリ、途切れた。
次に目が覚めた時、俺はまずさっきよりも体が軽いことに気がついた。
依鶴のカバンから取り出したケータイを床でうつぶせになって操作していた記憶まではある。
それがなぜか今は、ベッドに横になっている。
どういうことだろう?
ふと、足音が聞こえた。
俺は無意識に警戒する。
まだ少し体はだるいが、動けないわけじゃない。
コンコン、叩かれるノック音。
「入るぞ」



