俺が夢で見たと思っていた妻(仮)は、ここに実在していた。

バクバクする心臓を左手で押さえ、目覚めたばかりなのに息切れをしている俺を見て、彼女は笑った。

「さっきも話したのに、どうしてまた驚くのよ」



たしかに、夢(と思いたい)の中の彼女と、今目の前にいる彼女の姿形はまったく同じ。

「や、やっぱりさっきのは…」

夢じゃなかったんだ。



「もう~やっと会えたと思ったら気絶しちゃうんだもの。ひどいじゃない」

「ひどい…って…」

当たり前じゃないか!

「ひどいわよ。1年ぶりなのに、うれしくないの?」

妻(仮)は、俺の記憶にある妻そのものの拗ね方で、唇をとがらせた。

「本当に…紗希なのか…?」