しあわせおばけ


真っ青なんて、相沢は大げさだ。

でも今日は、朝から掃除やら明日香の機嫌取りやら(取れなかったけど)でバタバタしていて、少しめまいを感じる。

妻が恋しいなんてナーバスになってしまったのも、疲れ気味のせいだろう。

俺は相沢の言葉に甘えて、ソファで横になった。



―…目を閉じていると、キッチンから食器が触れ合う音が聞こえる。

まるで妻が料理しているそばでうたた寝をしているような、この上なく懐かしい安心感。



ほどよく冷房の効いた部屋に、夕飯の匂い。

実際そこにいるのは相沢だけど、穏やかな時間が心地よいことに変わりはなかった。



そうして10分くらい経っただろうか。

このまま眠りに落ちてしまいそうになったとき、トントンと階段をおりる音がした。

明日香だ。