「大丈夫だよ。掃除してたら急に紗希が恋しくなって泣けてきただけだ。あははは」
俺は相沢の目を見ず答えた。
自虐発言と渇いた笑いで、なんとか冷静になろうとした。
相沢はそんな俺を見て、
「おまえがそんなにいつまでもヘコんでたら、紗希ちゃんだって心配でゆっくり寝られないぞ」
と、情けない顔をした。
「もっと俺を頼れって。愚痴でも弱音でも、何でもいいからさ」
「わかってるよ。今日だって、来てくれて本当にありがたいと思ってる」
俺は、落とした掃除機を拾い上げながらそう言って、
「ケーキ、俺も見よっと。行こうぜ」
と、逃げるように階段をおりた。
これ以上やさしい言葉をかけられたら、また泣いてしまいそうだった。



