掃除機のスイッチを切って手を離すと、ガタンと派手な音がした。
そのまましゃがみ込んで、両手で顔を覆いながら声を殺して泣いた。
そのときだった。
「ずいぶん病んでるなぁ」
突然背後から聞こえた声に、肩をビクリとさせて振り向くと、階段をのぼりきったところに相沢が立っていた。
俺は乱暴に涙を拭って、平静を装って立ち上がった。
「…べつに病んでねーし。相沢来たら呼べって言ったのに、明日香なにしてんだよ」
「明日香ちゃんなら、下で俺が持ってきたケーキの品定めしてるよ」
「そう…」
結果的には、ケーキを買いに行かなくてよかったと喜ぶべきか。
「そんなことより、おまえ大丈夫か?何かあったのか」
相沢が心配顔で言った。



