しあわせおばけ


時間はかかるだろう。

何年先になるかわからない。

あの【おばけ】を愛したのと同じくらい、誰かを愛する自分を、まだ想像できない。



でも、こうして俺は、与えられた残りの人生を、ゆっくり、前を向いて生きていく。



家族の幸せのために。



これでいいんだろ、紗希?





両手を上げて、うーん、と体を伸ばすと、晩夏の青空が、ビル群の合間に広がっているのが見えた。



眩しさに目を細めたとき、雲の隙間にフワリと舞う天使が見えた気がした。