そんな、できもしないことを考えながら掃除機の轟音を響かせていると、ふと虚しさを感じた。



妻が生きていた頃は、掃除機なんて触ったこともなかった。

相沢が遊びに来る日には、彼女が手作りのケーキやクッキーを焼いて、俺はというと、明日香と一緒につまみ食いをしては怒られた。



それが今はどうだ。

掃除機って意外と大変なんだってことに今さら気付いたり。

愛娘にケーキを買い行くことを拒まれたり。



必死に家事をこなそうとしても、わからないことだらけの日々。

自分がいかに情けない男であるかを、これでもかと思い知らされる毎日。



「何やってんだよ、俺は」

そう呟いた途端、涙がひと筋、頬を伝った。