コンコン--
「明日香、入るぞ」
2階、明日香の部屋の前。
返事を待たずにドアを開ける。
明日香は父の無断入室に怒るでもなく、ベッドの上にぼんやり座っていた。
「今、ママと話してきたよ。コロッケ一緒に作りたいってさ」
明日香の疑いのまなざしが俺に突き刺さる。
信じられないという気持ちは、誰よりも理解できるつもりだ。
だって俺自身、妻が現れたとき、その姿を目の前にしていても信じられなかったくらいだから。
「ママに言いたいこととかあったらパパが伝えるし、だから…―」
そのとき、玄関のチャイムが鳴った。



