俺はそっと手を伸ばし、妻の頭を撫でようとした。

そのとき、ふいに妻が、

「あのね」

と妻が顔を上げたから、俺は、

「うぉいっ」

と、慌てて手を引っ込めた。

「?」

「きゅ、急に顔上げるなよ、びびるだろ」

「ああ…ごめんね」

妻は目尻の涙を拭った。

「あのね、違うのよ。あっちゃんママって言ったのが気に入らなかったんじゃないの」

「じゃあ、どうしたの」

「私…あのとき…」

妻は何を思っているのか、声を詰まらせて、頬をまた涙が伝った。