子供の親を、○○ちゃんママ、○○ちゃんパパと呼び合うのは、イマドキ当たり前のこと。

俺も最初こそ抵抗あったものの、明日香ちゃんパパと呼ばれるうちに、なんとなく馴染んできた。

慣れない妻が戸惑う気持ちはわかるけど…―



「紗希」

俺は顔をうずめたままの妻のそばに、そっと近寄った。

正面にあぐらをかくと、妻がすすり泣いているのがわかった。

「紗希、泣くなよ」



昔、よくケンカしたときのことを思い出す。

結婚前、まだ派遣社員として同じ会社で働いていたとき、俺は彼女に内緒でべつの女性社員と食事に行ったことがあった。

後日どこからかその話を聞きつけた彼女は、当時俺が住んでいたアパートの部屋で、こんなふうに泣いた。

あのとき俺は、どうしたっけ。

そうだ、たしか頭を撫でて、ごめん、となだめたんだ。