ダイダロスの翼

トールは自分の弱さを自覚した。

その弱さを克服することよりも、弱いなりに進む方法を選んだのだ。


だが、彼の選んだ方法には『犠牲』がつきまとう。

密輸した銃による犯罪もその1つ。


どうすれば、犠牲を出さずに住民を救えるのか。

その模索は、

レイノルドに託された。


「トール」


「喜べよ。

お前の無鉄砲さを認めてるんだ」


そう言って笑ったトールは、歳の割に若く見える。

おそらく彼はずっと、『物分かりのいい大人』のふりをしてきていたのだ。

レイノルドは机から手を離した。

手のひらに残るテーブルクロスの感触は、別離の感触。


「……感謝する、トール。

お前の決断と、それまでの迷いに。

ああ、それから。

……やっぱりトールも、住民を助けたかったんだな。

エゴだけじゃなくて、安心した」


むっとした表情になるトールへにやりと笑って、レイノルドはきびすを返した。