ダイダロスの翼

理由など関係なく。

今できることを。


「お前はなぜ銃を持つんだ」


理由を問うと、少女は答える。


「こうでもしないと違反を止められないからよ」


レイノルドが最初に町へ足を踏み入れてから、3か月後の8月。


レイノルドと瑞緒は、再び町で出会った。


月影が、波打つ川面をやわらかく照らしている。


川原に立つレイノルドは、土手の上からこちらを見ている瑞緒を見上げていた。


「こっちに来たらどうだ」

「人に近付くと暑いじゃない」


「つれないな」


レイノルドは笑って見せる。

見下ろしてくる瑞緒の、黒髪と黒い上着の隙間からのぞく白いシャツが、月明かりに照らされて綺麗だった。


「……あなた、最近は銃を持っていないのね。

よかった」


遠くで、花火の上がる音がする。