レイノルドは、先程から視線を下げっぱなしのトールをしっかりと見据えた。

真正面から彼を見て、ようやく導き出した結論を告げる。


「トール。

俺はまた、町へ行く」


決意が具現化したような強い声に、思わずトールは顔を上げる。

困惑したように、丸顔に埋もれた瞳が揺れている。


「レイノルド、俺の話を聞いていなかったのか?

迷うくらいなら行くな」


「聞いていたさ。

だから行くんだ」


ようやく目の合ったトールは、ひどく怯えた顔をしていた。

何に怯えているのか、何から目をそらしていたのか、今のレイノルドには分かる。

トールは、迷うのが怖いのだ。


「トール、お前は迷うなと言ったな。

お前は迷いを克服したわけじゃない。

迷うことすらためらっているんだ」


町を見るのが怖い。

住民を、監視者を見るのが怖い。

迷って進めなくなることが、怖い。


だがレイノルドは決意した。


「俺はフェンスを越える。

迷いを越えてみせる」


息の止まったようなトールを残し、レイノルドはきびすを返した。