ダイダロスの翼

懐中電灯を手に、レイノルドは林の中を進む。


手元の明かりは、行く手というより密集する枝葉を照らした。

茂みを手でかきわければ、帰れと言わんばかりに派手な音がする。


『帰れよ。

トールは間違ったことを言わないだろう。

おとなしく従っとけ』


「……そんなの知るか」


つぶやきながら邪魔な枝を乱暴に押しのけると、倍の鋭さを持って跳ね返ってきた。


顔に走った痛み。
だがめげずに、レイノルドは進む。


彼は高井瑞緒に会ってしまった。


彼女によって住民が傷つくのを見た。

そいつはただの残酷な女かといえば、それだけではないという気がする。


「……そう、また会えるさ、きっとな」


取引相手を危険にさらした少女のことを、レイノルドは知りたかった。