ダイダロスの翼

銃を突き付けている少女に向かって、レイノルドは余裕の笑みを浮かべてみせる。

恐怖はなかった。

あるのは、正しい事をしているという確信のみ。


「銃を手放せだと?

断る。

俺はこの島の住民を助けだすためにここへ来たんだ。

銃を突き付けられようと、お前なんかに屈するものか」


不敵に笑うレイノルド。

すると少女は、怒りも動揺もせず、ただ呆れたように息を吐いた。


「助ける、ね。


あなた、知らないの?

ここでは武器所持は禁止。


正義の味方なら、決まりくらい守ってみなさい」


少女は疲れたようにそう言った。

その偉そうな口振りが、レイノルドを苛立たせる。


「……決まりを守れだと」


言いながら、レイノルドはゆっくりと腰の銃を地面へ置く。

同時に。


「では……これで、文句はないだろう!」


――検索、『対銃撃戦』。
――ダウンロード開始。
――インストール完了。


地面へ置いた銃から手を離すと同時に、レイノルドは少女との間合いを一気に詰める。


「人に銃を捨てろと言っておきながら、お前は銃を持つのか?」


驚いて身を退く少女の幼い瞳が、一瞬視界を横切った。


インストールされた動作は止まらず、レイノルドはそのまま銃を持つ腕をとらえ、ぐいと捻り上げる。


少女の小さな手から、銃がこぼれ落ちた。

それを見届けて、レイノルドは笑ってみせる。


「これで、2人とも丸腰だ。

話をするにはこの方がいい」


悔しがるかと思いきや、少女はしれっと一言。


「確かにね」


レイノルドの腕の中。
精悍で、だが力を込めれば簡単に折れそうな、儚い手。