ダイダロスの翼

『監視者』。


島の研究者に雇われ、町の武器所有者と脱走者を取り締まっている者。


目の前に立つ少女もまた、監視者だった。


レイノルドは、以前トールがぼやいていたことを思い出す。

『最近、監視者の動きが厳しくなっている』


だから、とトールはこう続けた。

『レイノルド、町へは絶対に入るな。
わざわざもめ事を起こす必要はない』


もめ事、とレイノルドは心中で吐き捨てた。

町に入らなければ、もめ事は起きない。
少なくとも、ダイダロスには。


レイノルドは、先程何の容赦もなく住民を撃った少女を睨みつける。


もめ事を恐れている場合か。

住民が傷ついているのに。


「フェンスを越えなきゃ、それに気付くことすらできなかったな」