銃の買い手は、すぐに見つかった。


相手は中年の男。

約束通り金を持ってきた彼に、レイノルドはうなずいて見せる。


――言語環境、『Japanese』。
――変更完了。


「俺達は銃を渡すことしかできない。

後は君達でがんばってくれ。

……きっと、大丈夫だから」


レイノルドが日本語で男へ話しかけると、男は驚いたのか、ひょいと眉を上げる。


「いやぁ、外人さん。

日本語が上手いね」


注目してほしかったのは日本語の上手さではなかったのだが、
「まあ、どうも」
と一応こたえておく。

レイノルドは、自分の発した日本語のあいまいさに、内心であきれた。


「とにかく、俺達がついてるから安心してくれ」


気を取り直してそう主張すると、男は受け取った銃を眺めながら、楽しそうに笑った。


「ありがとうよ、兄ちゃん。

助かる」


トールが得意げにレイノルドを見上げる。

『助かる』……レイノルドが最も聞きたかった言葉だった。


売買を終えて野営地へ戻る道すがら、トールは始終にんまり笑っていて、待っていたマリーナに気味悪がられてもご機嫌だった。


「どうしたのよ」

「なに、俺はやっぱり間違っていなかったと思ってね」