華京のところへ行くまでの間、秋蛍は珍しく嫌味ひとつ言わず黙っていた。


彼は何か思い悩んでいるような感じで、きっとそのせいだったのだろう。

香蘭が横から窺う限りでは、不満そうな表情をしていることが多かった。



長い廊下を進んでいくうちに、次第に柱が豪勢なものに変わっていった。

その柱を辿っていった一番奥の扉が、華京の待つ謁見室だった。


「おお、来たか」


二人が謁見室の中に入ると、玉座に座っていた華京は待ちわびていたかのように立ち上がり、こちらに近づいてきた。


すると秋蛍が香蘭をちらりと見てから、香蘭にそこで待つように指示し、自分は華京に近づいて行った。


香蘭がなんとなく秋蛍を目で追っていると、華京に秋蛍がなにやら耳打ちし始めた。


「は?」


秋蛍から何かを聞いた華京は顔をしかめて秋蛍を見た。


「わけがわからない。どうしてそうなる」


「鏡が言うので可能性は高いかと。俺もまさかとは思いましたけどね」


そうして二人して香蘭を見たので、香蘭はようやく自分に関係のある話が交わされているということを察した。