「そんな馬鹿なことがあるか。昭遊ってのは昔話にでてくる術師のことだろ」


「その術師を殺したのは、その男だよ。そいつはもう何百年も生きてる。気味の悪い化け物さ」


宝焔は嘲るように秋蛍を見て、嫌な笑みを浮かべた。


「昭遊を殺し、自害して―――それでも死にきれずに妖魔と化した、恐ろしい化け物だよ」


ハルとカオルを除いた他全員が、一斉に秋蛍を見た。


香蘭は黙ったままの秋蛍と目があい、動けなくなった。



秋蛍の黄緑色の目は、今までになく淡く輝いているように見える。



ハルの中で見たあの秋蛍の目は、黒だった。


あの黒い瞳の秋蛍と、目の前にいる秋蛍が同一人物であると香蘭は確信していた。



「そんな奴の味方をしてどうするの?そして兄上、兄上はそこにいる女を殺した昭遊の生まれ変わりなんだよ?」


「それが何だって言うんだよ。俺は俺だろうが!」


憂焔は宝焔に剣先を向けて睨みつけたが、宝焔はたじろいだ様子もなくただため息をついた。