小さく呻いて、香蘭は身をよじらせた。


「香蘭!」


憂焔の顔がすぐそばにあり、憂焔に抱きかかえられているのだということを理解した。


(そうだわ、ここでハルの中に引きずられて…)


体を起こすと、頭にずきっと痛みが走った。

さすがにハルの流れには、まだ耐え切れない。


額を押さえて痛みに耐えていると、心配そうにカオルが香蘭の手に触れた。

カオルの手から、何か柔らかな気のようなものが流れ込んできた。


じわじわと痛みが緩和されるとともに、鏡の中で見たものが頭の中に蘇ってきた。



秋蛍様は―――



「大丈夫か?」


憂焔が苦しそうにしている香蘭をみかねて、そっと髪を撫でた。


香蘭は憂焔に微笑み、平気だと言って立ち上がると、それと同時に部屋の外が騒がしくなり、宝焔がにっこりと笑った。


「ご到着のようだね」


続いて部屋の扉が大きな音とともに破られ、秋蛍と珀伶が姿を現した。


「秋蛍様、お兄様!」


「香蘭、無事だったか」


香蘭が駆け寄ると、珀伶は険しい顔をして香蘭の両肩を掴んだ。

その表情に、香蘭はただごとではないと悟って真っ直ぐに珀伶を見上げた。