訊きたいけど、訊けない。

そんな私の『訊きたい』オーラを感じ取ったのか橋本さんは話を続けた。

「お見合いの時に言ったのを覚えてる?
ほら、真剣に結婚を考えた人がいた、って」

確か、その人と別れてから恋愛が出来なくなったって言ってたような。
その事を思い出し、軽く頷いた。

「大学時代に付き合っていた女性。
一生を考えた相手だったんだ」

東京で就職した橋本さんと地元に帰り就職した彼女。
学生時代は傍にいて当たり前だった関係が顔を見る事すら難しくなった。
思うように進まない遠距離恋愛。

就職して早く一人前になりたいと考えた橋本さんは、恋愛よりも仕事を優先させた。
それをもどかしく思う彼女。

どこかで歯車が狂ってしまった。

思わぬところから彼女は猜疑心を抱いてしまった。
橋本さんには新しい彼女がいるのでは、と。

些細な擦れ違いから生まれた亀裂。
でも、その時 橋本さんは事の大きさに気付けなかった。

結局、その人は橋本さんとは別の人生を選び、今は幸せに暮らしている。
そう、人づてに聞いたと言う。


「今が幸せらしいから、別にいいんだけど…」


まるで自分に言い聞かせてるみたい。
橋本さんの表情はどこか苦しそうで。



それからは、誰と付き合っても長続きしなかったそうだ。