「ネレイド。お前、人間は好きか?」
ディオンが訊ねる。
( ええ、好きよ )
アンネッテと、同じ答えだった。
( この街に住む人間は、特に好きよ。 とても妖精思いの人たちだから )
そうか、とディオンは呟くだけだった。
ふと宿の前で、誰かが立っているのが見える。
「もう! どこ行ってたのよ!」
アンネッテが叫んだ。ふてくされた表情(かお)をしながら、こちらへと走って来る。
「え……?」
ネレイドの姿と赤ん坊を見るやいなや、ぴたりと立ち止まる。
「ディオンのおかげなんだ」
すると、次第にアンネッテは嬉しそうな表情をした。
勢いよく、ディオンに抱きつく。そしてよしよし、と頭を撫でた。
「何してんの」
意外にも、ディオンは冷静だった。
「成長したことを褒めてるの。ありがとう、ディオン、赤ちゃんを見つけてくれて」
「………」
また、だ。
〝ありがとう〟と言われたら、胸がきゅっと締め付けられる。
フェイに言われたときも、そうだった。
一体、これはなんなんだ。
「ディオン?」
アンネッテが顔を覗き込む。けれどディオンは無反応だ。


