洞窟の外へ出ると、辺りは薄明るくなっていた。
ザザン、と波音だけが聞こえる中、彼らは黙ったまま、砂浜を歩き続ける。
ちらりとディオンはネレイドを見る。
彼女はとても大切そうに、赤ん坊を抱いていた。
「ディオン?」
心なしか、いつもと様子が違う。
「なあ、フェイ。あの赤ん坊は、両親からも妖精からも愛され、さぞ幸せだろうな」
「……お前だって、妖精に好かれているじゃないか」
「好かれてなどいない。みんな、僕を恐れている」
「恐れている?」
そんな風には見えない。
現にアンネッテだって、ディオンに親しく接しているのだから。
「お前は……祝福を受けなかったのか?」
すると、ディオンは黙り込んだ。
祝福、か。
本当は、多くの人々からの祝福を受け、生まれるはずだったのかもしれない。
「受けたさ。歪(いびつ)な祝福を、な」
「……ディオン」
一体、お前の過去に何があったんだ。
そう訊きたかった。けれど、訊くことなど出来なかった。
あ…、とネレイドが小さく呟く。
少し先の方に、宿が見えてきたのだ。
彼女は悲しい顔をしている。


