「その赤ん坊が求めるものは、お前ではなく、母親の温もり。だから悲しんでいるのだろう?」
ディオンには見えているが、フェイにはまったく見えていない。
「ディオン、あそこに……いるんだよな?」
「ああ、そういえばお前には見えないんだっけ」
フェイの方を向き、ぐい、と顔を引き寄せる。
まさ、か……。
嫌な予感がした。
咄嗟に体に力を込め、背中を反(そ)らせる。
「なぜ反るんだ。せっかく僕の力を分けてやろうと……」
「確かに妖精は見たいが……さすがにキスされるのは一回で勘弁してくれ」
心臓が、ばくばくと五月蠅い。
「あ、そう」
ディオンは顔を離す。
はぁ、とフェイは安堵の胸を撫で下ろした。
ディオンは首から掛けているペンダントを取り出し、鎖ごと首から外す。
月の石(ムーンストーン)を握り、目を閉じた。
一体何をしてるんだ?
不思議そうに、ディオンを見る。
すると、ムーンストーンが仄(ほの)かに光を放ちはじめた。しばらくして、光るのがおさまる。


