世界の終わりに、君は笑う




薄暗い洞窟の中、ばしゃばしゃと水音を立てながら歩き進める。
ふと何かの気配を感じ、足を止めた。
暗闇の中にいくつもの赤い光らしきものが見える。

目を凝らして見てみれば、頭に二本角がある。
四足ともに鋭い爪がついているおり、長い尾にはギザギザとした尾びれがついていた。
体表を覆っているのはダークグリーンの鱗(うろこ)だ。

「図体のでかい水獣どもだな」

唸り声を上げ、ディオンを睨みつけている。
数体の水獣が、一斉に襲い掛かってきた。

「邪魔するな」

腰に掛けていた短剣を抜き、かわしながら鱗のついていない腹を狙い、斬りつける。
しかし海水に足を奪われてしまい、思うように動けない。

一体の尾が、ディオンの頬をかすめる。
ギザギザとしている尾びれは、いとも簡単にディオンの頬に傷を入れた。
流れ出る生温かい血に、指で触れる。

「……痛いなあ」

低い声が、洞窟に響いた。
刹那――ディオンの左目がスカーレットとなる。
放たれる殺気に、一瞬水獣たちが怯んだ。
しかしすぐに唸り声を上げる。
一体が咆哮(ほうこう)した――と同時に、再び一斉に襲い掛かる。