すぐに扉を開けたが、中には誰もおらず、そしてやはり閉めていたはずの窓が開いていた。
「赤ちゃんはいつ攫(さら)われたの?」
「昨日です。部屋で坊やは眠っていて、私は主人の手伝いをしていたのですが……」
泣き声が、部屋から聞こえてきた。
彼女は慌てて部屋に戻ったが、もうすでに赤ん坊の姿はなく、窓は開いていた。
「坊やから目を離さなければ……!」
声を上げ、夫人は再び泣きはじめる。
「私たちは妖精の姿が見えない……ですから、子どもを捜す方法が見つからないのです」
夫君(ふくん)は頭を抱え、悔しそうに歯を食い縛っている。
「私が赤ちゃんを見つけてみせるわ」
アンネッテが立ち上がった。
「けれど、どうやって……?」
夫君が訊く。
「私はエルフだもの。他の妖精と話しが出来るわ。赤ちゃんの居場所を知っていないか訊き回ってみるわね」
早速行きましょう、とフェイの腕を掴む。
部屋にいるディオンを置いて、二人は宿から出ていった――。


