世界の終わりに、君は笑う




「全ての者が荒(すさ)んだ心を持っているわけじゃない。優しい心を持っている人だって、たくさんいる」

「……人間なんて、妖精や精霊たちにとって迷惑な存在だ」

だから消えてしまっても……、と言いかけたとき。

「それは違うわ、ディオン」

ロビーからやって来たアンネッテが、口を挟んだ。

「私は人間のこと、好きよ。人間が消えてしまえばいいだなんて思わないわ。確かにレクスの者たちは憎いけど……私たち妖精のことを大切にしてくれる人間だって多いのよ」

ディオンは黙り込む。

「クレタスに住む人々は、この街が水害に遭わないのは妖精が守ってくれているため、と信じている。だから毎年、春と秋に水の妖精や精霊への感謝を表すための祭りをしているそうだ。妖精たちも姿を見せ、一緒に楽しむこともあるらしい」

フェイが言った。

「ディオン、決して人間が消えてしまえばいいだなんて思わないで。人間がいないと困る妖精だっているのよ」

アンネッテの表情は悲しげだ。
ディオンはじっと見つめていた。
そして、フェイに掴まれている腕を振り払う。

「ディオン……」

手伝ってくれる気になったのかと思ったが、それは違った。
部屋へと入り、勢いよく扉を閉めてしまったのだ。

はぁ、と二人はため息をついた――。