「ここにするの?」
ディオンが選んだ宿は、海に近い所に建っていた。すぐ傍に海があるのが嬉しいのか、アンネッテは笑顔だ。
がちゃ、と扉を開け、ロビーに入る。
「坊や、坊や……」
女のすすり泣く声が聞こえた。
傍らで座っていた男が、フェイたちに気付き、立ち上がる。
「いらっしゃいませ」
元気のない声だった。
「どうしたのですか?」
フェイが訊く。
女は、依然と泣いていた。
「実は、一歳になる私たちの子どもが攫(さら)われてしまって……」
エルフの里でも同じようなことがあったのを思い出す。
まさか、またレクスか?
そう思ったが、どうやら今回は違うようだ。
震えた声で、女は口を開(ひら)ける。
「妖精が、坊やを……!」
「妖精が?」
アンネッテは耳を疑う。


