世界の終わりに、君は笑う




『もう残された時間は少ないのだよ』

ダスティはそう言っていた。
それは恐らく、人工精霊――つまり漆黒のワイバーンがもう少しで目覚めることを意味しているに違いない。

「フェイ。とりあえず、宿を決めないか。ずっと歩いていたせいで、足が痛い」

その言葉を聞き、ため息をつく。

「人工精霊が目覚めてしまうかもしれないというのに、もう少し危機感はないのか?」

まったくない、とディオンは言う。

「ヤツが目覚めてしまえば、多くの人々が死んでしまうんだぞ」

「人間なんて、消えてしまえばいいのさ」

思いがけない返答に、言葉が出ない。
ディオンの瞳は、あまりにも冷ややかだった。
フェイに背を向け、少し先の方できょろきょろと辺りを見回しているアンネッテのもとへ行く。

「宿を探しに行くぞ」

まだ此処にいたい、という思いが強かったが、ディオンの放つ雰囲気に、アンネッテはたじろいだ。
「フェイ、行くわよ?」

ディオンはすでに先を歩いている。
先ほどまでゆっくりだった歩調が、今では速い。
下手(へた)をすれば見失ってしまうほどだ。

ああ、と言って、フェイは後をついて行った――。