「フェイ、どうしたの?」
口元しか見えないが、その者の放つ雰囲気に、少しの不審さを覚える。
「…いや、別に」
そう言っているが、実際は気になって仕方がない。
次第に、その者との距離が縮まる。
「歯車が、廻(まわ)りはじめた」
すれ違い際に、囁(ささや)かれる。その者は不気味に笑っていた。
「歪んだ運命(歯車)は、もう誰にも停められないよ」
咄嗟に振り向き、人込みの中を見回したが、どこにもその者の姿はない。
「どうした、フェイ」
ディオンが訊ねる。
「フードを被った奴が何か言ったのを、聞こえたか?」
「いいや、何も。何を言っていたんだ?」
「〝歯車が、廻り始めた〟と。どういう意味か分かるか?」
「……人工精霊が眠りから覚めようとしているのかもな」
「そんな…!」
「あくまでこれは僕の憶測に過ぎない」
しかし、その憶測は遠からず当たっているだろう。


