世界の終わりに、君は笑う




「すごく賑わっているわね!」

市場の中を歩くアンネッテは、心の底から楽しそうだ。
周りの人々はちらちらと彼女のことを見ている。

「あれが、エルフ……」

「一見、人間とそっくりね」

こそこそと話し声が聞こえる。
けれど、人々がアンネッテに向ける視線は、決して嫌らしいものではなかった。
初めて見るエルフに、心を奪われているのだろう。

身の危険はなさそうだな、とフェイは胸の内で呟く。

 クレタスに住む人々は特に妖精を崇めていると言われているから、アンネッテが嫌な思いをする事もないだろう。
 宿を見つけたら、海のほとりに連れて行こうか。
 きっと、はしゃぐだろうな。

初めての物を見るアンネッテの横顔は、本当に輝いて見える。
思わずフェイも口元を緩めた。
ふと人込みの中、向かいからやって来る一人の者に気を取られる。
その者は鼻の辺りまで深くフードを被っていた。