世界の終わりに、君は笑う




「此処にいるレクスの者たちが死んでいく、それはつまり……街の人々にかけている魔法がきれていくということだ」

人々が目覚める前に、何より騎士や警備の者たちが目覚める前に姿を消しておかなければ、国王を殺したのだと勘違いされてしまう。

「でも、あの狼たちが……」

「大丈夫だ。いいから早く……アンネッテを抱き上げろ」

ふらりとディオンは立ち上がる。
引き摺(ず)るように、扉に向かって歩き始めた。
フェイはぐったりとしているアンネッテを抱え込み、ディオンのすぐ後ろまで走る。

扉まであと僅か、という所で、目の前に二匹の狼が立ち塞がった。
大理石は血で覆い尽くされ、騎士、国王、そしてレクスの者たちの死体が、転がっていた。

「次は、俺たちだというのか……」

く、とフェイは唇を噛み締める。
唸りながら、狼はじりじりと近寄って来る。
牙を剥いた、その刹那――二匹の狼は霧となってしまった。

どうしてだ?

浮かんだ言葉は、それだけだった。

「早く……行くぞ」

ディオンは苦しそうに、息を切らしている。

「おいディオン、大丈夫なのか?」

「心配なんてしている暇は……ないぞ。さっさと、その足を動かせ」

胸元を握り締めながら、それでもディオンは走り出す。
あ、ああ……、と言って、フェイもまた走り出した。

「……本当に、感情は邪魔をする」

小さく呟かれたその言葉は、フェイに届くことなく、仮面の中で消えた――。