国王は口から涎(よだれ)を垂れ流している。
目は、真っ赤に充血していた。
〝おぞましい〟――まさに、その言葉がぴったりだ。
誰が見ても、狂っていると感じるに違いない。
騎士の傍らに落ちている剣を、ダスティは手に取った。
先ほどまでの悲鳴が、不気味な笑い声へと変わる。
「……イカれてる」
アンネッテが呟いた。
甲高い声で笑いながら、ダスティは自身の胸へと、剣を勢いよく突き刺した。
何度も何度も、突き刺す。
まるで痛みなど感じていないかのようだ。
飛び散る血が、大理石の床をさらに汚す。
最後に自身の首へと剣を突き刺したまま、ダスティは倒れた。
「一体、何をしたんだ!」
フェイの叫び声が、響いた。
火傷の痕がある男を含め、そこにいた数十人以上のレクスの者たちが、クスクスと笑う。


