右手に剣を、左手に君を




学校の、屋上にて……。



連日の修行と探索で疲れきった俺達は、昼休みに集まってぐったりしていた。


人気者の雅と健太郎も、さすがに体力が追いつかないらしい。


全ての誘いを断って、一緒に海からの風に吹かれていた。


空の色はいよいよ暗く、梅雨のはじまりを暗示していた。


肌寒い空気は、湿り気を帯びてきている。



「渚……何か思い出したか?」



話をふると、渚は申し訳なさそうにうつむいた。



「ダメなの……色々やってみてはいるんだけど」


「んー、いっぺん気絶するくらい殴ってやろうか?」



健太郎がふざけて、渚の頭を拳でグリグリする。


「やめてよぉ」と言いながら、渚は苦笑していた。



「行き詰まり……か」



雅がため息をつく。



「あぁ……あの時みたいに、偶然玉藻や迦楼羅に会うのを待つしかないのかもな。

あっちは俺達を敵とも思ってないだろうから、わざわざ襲撃してくるとも思えないし……」



俺が答えると、健太郎が立ち上がった。



「おめーらまで暗くなってどうすんだよ。

大丈夫、そのうちいい方法が見つかるって!」


「そのうちって……」


「なぁ……」



現実には、一刻の猶予もない。


行方不明者は一人も見つからず、病人も一人も回復していない。


それどころか、それぞれの人数は、じわじわと増え続けていた。


若者だけでなく、子供や年寄りまで。



「健ちゃんの言う通りだよ。

心配してもしょうがないから、
やれる事をやるしかないよ」



渚が言うと、健太郎が「だよなーっ」と、彼女と顔を見合わせた。