《もう、肉体が限界のようだな。
人間とは、不便なものよ》
空亡は、まだまだ余裕のある声で、そう言った。
悔しい事に、それは事実だった。
怪我に怪我を重ね、
治らないうちに、また新しい傷が産まれ……
たかが人の子である俺の肉体は、限界が近づいていた。
続けざまに大量の霊力と生命力を放出し、
もう、立っているのがやっとだった。
《もう、苦しむことはない。
終わりにしてやろう》
空亡の周りに、その全ての妖気が集まっていく。
あれがぶつけられたら、確実に死んでしまう……。
「…は、……ぁ、はぁ……っ」
乱れる息。
かすむ視界。
それでも。
あきらめるわけには、いかない。
約束したのだから。
渚を。
今世でこそ、幸せにすると。
《恒一、聞こえる?》
「リカ、さん……」
《私の力も、そちらに送るわ。
あなたはただ龍神剣を信じて。
本当に、これが最後だから》



