森の中を走って行くと、渚の言う通り、妖(アヤカシ)の気配が近づいてきた。
それに、普通の人間の気配も。
「くそっ、めんどくせぇ」
健太郎がうなった。
人間がいるという事は、そいつに見つからないように妖を倒さなければならないという事。
それはただ妖を倒すより、骨の折れる作業だった。
「いた……!」
森の中。
少し開けた場所に、何体かの人影を見つけた。
いや、人の影じゃない。
それは鎧(ヨロイ)を着たガイコツの姿をした、妖だった。
妖は、見える限り3体。
その前に、制服姿の男女が一組、地面に座り込んでしまっている。
自分達と同じ制服だ。
「雅」
「あぁ」
声をかけると、雅が先陣を切って駆け出す。
そして男女の後ろに近づく。
姿を見られる前に二人の首の後ろを叩き、気を失わせた。
「よし!コウ、行くぜ!」
「おう」
左手に力を集中させる。
熱さを感じれば、すぐに草薙剣が姿を現した。
同時に健太郎も左手から、布都御魂(フツノミタマ)を出現させる。
刀身が赤く輝く、燃えるような熱さを帯びた剣だった。
「ここに隠れててくれ」
男女を抱えてきた雅は、渚の足元にその体を転がす。
そして、目を閉じた。
左手に力が集まり……。
その身にあった長身の、十束剣(トツカノツルギ)が現れた。
その身は翡翠色に輝く。