右手に剣を、左手に君を



「な……っ!?」

「!!」



健太郎が驚く間に、雅が動く。


無傷だった十束剣を玉藻の足から抜き、

今度はその胸に突き立てようとした。



それを見て、健太郎は迦楼羅の方へ走る。


早く、とどめを刺さなければ……!


しかし、空亡が、それを許すはずはなかった。



《どけ》



空亡が短く言うと、

雅と健太郎は、玉藻と迦楼羅のそばから、

見えない力で弾き飛ばされた。



「わぁぁっ!」


二人の体は、波打ち際に落下する。


そして……。


黒こげの玉藻の体と、深手を負った迦楼羅の体が。


ふわりと、宙に浮いた。



《こちらへ……》



その声に呼ばれるように、二人の妖は、ゆっくり空亡に近づいていった。